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私の一冊

人事のみなさまにリレー方式で、心に刺さった選りすぐりの一冊を紹介いただきます。

第12回 :ソニー株式会社 北島久嗣さん

2014年07月22日

経営者・人事のみなさまにリレー方式で、心に刺さった選りすぐりの一冊を紹介いただきます。

「史上最大の決断」 野中 郁次郎, 荻野 進介

今回、本をご紹介くださったのは、 ソニー株式会社 北島久嗣さんです。ノルマンディ上陸作戦の修羅場から読み解く現場マネジメントの実践知!ぜひご一読ください!

出版社: ダイヤモンド社 (2014/5/30)

「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」―――

江戸時代『甲子夜話』を著した松浦静山の言葉だ。まさに、負けるときは負けるべくして負ける。一方で「勝ち」に「勝利の方程式」などない。
そういえば、自分のわずかな読書歴のなかで、日本陸海軍の「失敗」に関する本は数多く手にしたが、「勝ち」を得るストーリーにじっくり対峙したことはこれまでなかった。はずかしながら私の場合、成功談は押し付けがましい自慢話を聞かされるに等しく煩わしさが先に立つからかもしれない。

1944年のノルマンディー上陸作戦。
70周年の記念すべき今年に上梓されたこの『史上最大の決断』は、華々しい成功譚とは違い、いかに悪戦苦闘して連合軍が勝利を手中にするかを描いた修羅場、修羅場のストーリーだった。作戦は決して連合軍の意図通りのスマートな展開とはいかない。変化を見据えた判断や、人心の掌握を重ねつつ、連合軍側の勝利が辛くももたらされたことがわかる。

この本は単なる史実の列挙ではない。もしこの上陸作戦が1年早く敢行されていたらどうなるか、もしヒトラーが違う戦略をとっていたらどうなるか、という「IF」が提示されるのを皮切りに、リアルな戦略論の論考がすすむ。
ノルマンディー上陸作戦は、実際のところ大規模な「消耗戦」と局地的な「機動戦」の両方の性格を持つ壮大で複雑な取り組みだったことを知る。毛沢東の『矛盾論』の世界がここでも展開されていたのか、とワクワクしながら頁をめくっていった。
この対極的な作戦概念を巧みに編みあげるようにして臨機応変に全軍を指揮したのが最高司令官のアイゼンハワーだ。権力闘争渦巻く連合軍という「グローバル組織」のなかで、彼がいかに卓越したパワーマネジメントを成し得たか。彼のリーダーシップ分析は、海外展開に活路を開こうとする日本企業のマネジメントにとっても示唆に富むだろう。

アイゼンハワーについての記述部分で私が特に印象深かったのは、彼自身が「ブルドックと猫を一緒にしたようだ」と表現した、イギリス軍とアメリカ軍の組織風土の大きなギャップの存在である。彼は最高司令官として連合軍を1つのまとまった組織体として機動させるべく常に苦労した。そしてこのカルチャーギャップを克服しつつ、適宜戦略を遂行していった。
規模やレベル感に雲泥の差はあるが、製造拠点のタイ・バンコクに赴任し、現地や隣国マレーシア等の実態をみている私自身の経験的実感ともいささか共鳴するものがあった。
実際の現場マネジメントでは、チームでアウトプットを出すには相手を知ることが必須だ。しかし、これが意外とてこずる。
当然ながらコミュニケーションの勘所も日本人相手と随分違う。そんな製造現場でささやかな努力をする人事担当にも、この本はいくつかの実践知を与えてくれた。

さらにこの本では、アイゼンハワーを神格化して語るような野暮なことをしない。
凡人的な要素も数多く紹介する。わきも甘い。そうした凡人的要素に満ちた人が非凡な活躍をするにはどのようなプロセス・要素が必要なのか。
この本では「文脈力」という概念を提示して、この能力の獲得と実践がポイントであったことを示唆している。文脈力とは「人と人、人と物、部分と全体などの目に見えない関係性を察知し、さらにそれに新たな働きかけをする力」と説明されている。

しかし、小さな結論を導くために著者はこの『史上最大の決断』の修羅場を描いたのではないようだ。全巻を通じてこの作戦にかかわった様々な人のプロファイルが数多く紹介され、アイゼンハワー以外にも魅力的な人物を発見し、その人物について考えることができる。読み手がその立場に応じて自分に必要ななにかを汲み取れるオープンさにこの本の魅力を感じた。
まさに最後まで「巻を措く能わざる」ように愉しめた本だった。

ソニー株式会社

北島 久嗣 氏(きたじま ひさつぐ)

1989年4月
ソニー株式会社に入社
          厚木工場で労務担当
1991年8月
本社へ異動、人事部にて人事・研修・採用を担当。
2006年7月
仙台テクノロジーセンターへ異動、労務・人事を担当
2011年4月
本社へ異動、事業本部人事を担当
2012年7月
バンコクへ赴任。タイの関連事業所人事を総括。現在に至る。

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